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定性分析、10のチェックポイントと投資戦略

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定性分析は、事業内容や経営状態など会社の質を分析することです。

大前提として、株価を動かす最大の要因は業績です。投資家にとっては将来の業績が重要です。

バリュー投資の3つの基本の1つに業績の良さがあります。

この業績の良さは拡大上振れ持続性で評価します。そして、定性分析は業績の良さが持続できるかどうかを分析することに他なりません。

しかし、定性分析とは会社の未来を予想することでもあります。未来は誰にもわかりませんから、定性分析ははっきり言って難しいのです。

この定性分析をなるべく簡単にできるようにチェックするべきポイントをまとめ、それを使った投資戦略をお伝えします。

最重要ポイントは独自の強み

定性分析で一番大事なことは独自の強みを知ることです。これこそが利益の源泉だからです。

独自の強みがなければ、すぐに他社に真似され、価格競争に巻き込まれてしまいます。

その会社の強み、真似されにくさ、持続性、発展性を調べること。これが定性分析の最大のテーマです。

独自の強みチェックポイント

独自の強みをチェックするポイントは6つあります。

商品力

魅力的な商品やサービスを提供することで売り上げを上げることは業績拡大の大前提です。商品力を6つの観点でチェックします。

  • オリジナル性
  • 独自の技術
  • 独自の仕入れルート
  • 需要の持続力
  • 真似されづらさ
  • 特許

特に需要の持続力真似されづらさは併せ持っていることが理想です。

需要が持続しそうな商品は当然他社も参入してくるからです。ここで簡単に真似されてしまっては早くも価格競争に突入します。そうなると独自の強みがあるとは言えませんね。

その他の参入障壁

独自の強みの基本は商品力ですが、その他にも競合他社や新規参入者から守る要因があります。これにより、商品力はますます堅牢なものになります。

その他の参入障壁を6つの観点でチェックします。

  • 規制・行政の許認可
  • 乗り換えコストの高さ
  • ネットワーク効果
  • 地域独占
  • ニッチ分野でのシェア
  • 設備投資のむずかしさ

乗り換えコストの高さとは、商品やサービスを他社のものに乗り換えるときの面倒くささやコストの高さです。携帯電話事業がイメージしやすいですね。

ネットワーク効果とは、周りの多くの人が使っているので他のものに変え辛いことです。LINEはみんながやっているので自分だけ違うものを使いづらいですよね。

コスト競争力

低コストで製品やサービスを提供できることは、価格競争での優位性や、利益率を大きくすることにつながります。

コスト競争力を3つの観点でチェックします。

  • 独自の資産
  • 業務効率の高さ
  • 規模の優位性

コスト競争力を決める2大要因は、業務効率の高さと規模の優位性です。

業務効率の高さは機械化、IT化、そして細かい工夫の積み重ねが重要です。

一方、規模の優位性は一度獲得すると効果が持続します。会社の規模や事業が拡大してくるとブランドや資金力、仕入れのコストダウンが見込めます。

販売力・マーケティング力

商品の良しあしと売れるかどうかは別問題。販売力は、良い商品と顧客を結びつける大切な力です。

販売力・マーケティング力は5つの観点でチェックします。

  • ブランド力
  • マーケティング力
  • 顧客基盤
  • 販売網
  • 立地のよさ

企業文化・経営の仕組み

企業は事業を継続させることが第一です。

そのためには、優秀な経営者がいなくなっても、その企業の高いパフォーマンスを持続できるような、優れた企業文化や経営の仕組みが必要です。

企業文化・経営の仕組みは3つの観点でチェックします。

  • 優れた企業文化
  • 強い開発力・開発体制
  • 優秀な人材・育成システム

企業文化とはそこで働く人の営みそのものです。これが統一されていなければなりませんから、利益以上の価値観や理念が会社全体に浸透しているかどうかがカギです。

優秀な経営陣

経営者の優秀さや、企業文化、経営の仕組みの良し悪しは、経営学の永遠のテーマです。

経営書の大ベストセラーシリーズ『ビジョナリー・カンパニー』を参考に、6つの観点でチェックしましょう。

  • 経営計画の合理性があるか
  • 社会に役立ちたいという情熱
  • 地道さ、粘り強さ
  • 冷静さと謙虚さ
  • 安定した成長戦略
  • リスク管理

投資家からの判断チェックポイント

投資家からの評価をチェックするポイントは4つあります。

成長期待

一般的に、株式投資家は3年後の業績を予測して投資すると言われています。それはすなわち、今後会社が成長することに期待して投資するということです。

成長期待は4つの観点でチェックします。

時価総額
200億以下
売り上げ拡大余地
小売りなら1,000店舗、売上1,000億、時価総額1,000億
自己資本比率
30%以上、改善されてるか
自己資本比率
30%以上、改善されてるか

還元期待

株主還元と言えば、配当優待自社株買いです。これがそのまま還元期待のチェックポイントになります。

  • 配当の有無、増配の可能性
  • 優待
  • 自社株買い

需給

株式の需給が良くなると、株価が上がりやすくなりますね。

需給は3つの観点でチェックします。

  • 株式分割の可能性
  • 市場替えの可能性
  • 増資の可能性

増資は短期的には悪材料ですが、長期的にみると経営リソースの補充ので、これが活きれば業績は尚良くなるはずです。それは株価に織り込まれるでしょう。

流動性

流動性の低い株は扱いづらいです。なかなか約定しないし、成り行き注文すると根が飛ぶし。そういった株は発行株数を増やして流動性が高まることが期待されます。

これは多すぎても少なすぎても使いづらくなってしまいます。

また、500万株以下の株は上がりやすいと言われています。

チェックリストを使って自分で定性分析を

定性分析と一口に言ってもどこから手を付けていいのかわからなくなります。

そこで、この記事で紹介したチェックポイントをまとめたシートを作成、公開しています。

ふたつの投資戦略

定性分析力を高めると、分析の深さに合わせて投資戦略を変えることができるようになります。

中期投資

1つの銘柄に数週間~数か月の間投資する中期投資ではそこまで深い分析は必要ありません。

材料は以下のものを使います。

  • 四季報の業績、記事欄
  • 決算
  • 旬のテーマ

逆に、定性分析としては最低限やっておきたいレベルです。

業績、PER、チャートの3つの基本を押さえた上で参考程度にこれらの材料を見るといいでしょう。

期待リターンとしては10~20%ぐらいを狙います。

長期投資

1つの銘柄に1年以上の間投資する長期投資ではガチの定性分析を行います。

ウォーレン・バフェットがこのタイプですね。

材料は以下のものを使います。

  • 将来の数字を予想
  • 成長のストーリー
  • 持続性のあるテーマ

これらは四季報と決算短信だけでは読み取れません。バフェットは「有価証券報告書を10年分読む」と言いますので、それぐらい深く分析する必要がありますね。

投資チャンスは年に1度か2度。悪材料が出て、価値以上に売り込まれたときです。

当然下降トレンドになりやすいですから、含み損を長く抱えるポジションになりやすいです。

これにひたすら耐え、ある時ドカンと上がるのを待ちます。

その分期待リターンは大きく2倍以上を狙います。