株とは会社の所有権です。
この本質的な意味を理解していないと、「株はリスクが大きくて怖いもの」という漠然としたイメージを持つことしかできません。
最初に「株で稼ごう!」と思って始めると、投資の本質を見失います。その結果、毎日の値動きに一喜一憂し、感情的な投資をしてしまいます。これではもはや投資ではなく投機です。
感情的な投資は敗北に直結します。
リスクとは、自分が何をやっているのかわからないときに発生します。
そこで、株とは何か?をここできちんと理解しておきましょう。
株とは会社の所有権である
ある会社が発行している株を全て保有すれば、その会社は自分のものになります。
実際には、不特定多数の人で株を所有しているので、株主はその会社の部分オーナーといえます。
株に投資するということは、その会社のオーナーになることです。
これを知っていると、オーナーとしても視点で投資に臨むことができます。すると、投資する銘柄を選択するときに「この会社を自分は応援したいか?」と考えることができるようになります。
この発想は、投資を単なる金儲けの手段ではなく、社会貢献の意味も持つ物にします。
これが会社分析の動機となり、「なんとなく上がりそうだから」という曖昧な理由で投資してしまうことを防ぎます。
会社分析をすると、買いの理由がより明確になるため、売るべきところでしっかりと売ることができるようになります。
また、株主の特権として株主総会に参加することができますし、会社の業績が上がることに伴って株価が上昇すれば、もちろん値上がり益を得ることもできます。
株はリスクとリターンが非対称
株の値上がり益というリターンは青天井ですが、損失は限定されています。
もし会社が倒産したら株の価値はゼロになってしまいます。しかし、株の損失以上に責任を負わされることはありません。
これを株主有限責任の原則と言います。
一方で、会社が成長して業績が何倍にも拡大すれば、株価も何倍かになるかもしれません。
つまり、株式投資の損失には限界がありますが、利益には限界がありません。リスクとリターンが極めて非対称になっています。株はもともと投資家にとって有利な仕組みになっているのです。
なぜ株はここまで投資家にとって有利なのか?
会社が株を発行する目的は、資金調達です。なので、投資家にお金を出してもらうためにはそれに見合う以上のメリットを最初に提示する必要があります。
今でこそIPO(新規公開株式)には応募が殺到していますが、初めて株式会社が作られた大航海時代には今より資金調達が困難でした。
18世紀の大航海時代には船に乗って、金や銀などを取りに行くビジネスがありました。このビジネスのための資金調達が株式会社の始まりです。
この時代には大海原を航海することそのものに莫大なコストがかかるだけでなく、命を落とすほどの危険もありました。
今でこそ株式会社が倒産して投資した株の価値がゼロになるなんてほとんど考えられませんが、当時はその確率が今と比べてものすごく高かったんですね。
そのため、資金調達する会社からしてみればそのリスクを負ってでも投資する価値があるような仕組みを作る必要があり、その文化が今なお活きている、というわけです。
発行市場と流通市場
株を売買する市場には2種類あります。発行市場(プライマリーマーケット)と流通市場(セカンダリーマーケット)です。
発行市場では、会社が新規に株式を発行してそれを投資家が購入します。これで会社は資金を調達しています。
流通市場は、投資家が普段株を売買している市場です。我々個人投資家が株を売買しているのはたいていこの市場です。
流通市場で株がどうなろうと、企業の資金には一切関係ありません。
では流通市場は何のためにあるのでしょうか?
それは発行市場に投資家を集めるためです。
もし発行市場しか無ければ、投資家は株を売って利益を得ることができません。例え利益が発生しなかったとしても、すぐに現金化できない時点で投資対象としては抵抗がありますよね?
流通市場でいつでも売れるし、売却益も狙えるからこそ、発行市場で株を購入する人を確保できるのです。
会社が上場する3つの理由
株式会社には上場企業と非上場企業があります。
どちらも株を発行して資金を調達していることに変わりはありません。
上場するためには財務面や株主分布など一定の条件を満たさなければならないので、どちらかと言えば、上場すること自体は企業にとっては負担になります。
それでもなお、上場するには理由があります。
- 新株発行は銀行融資などによる資金調達を楽にするため
- 社会的な信用を得るため
- 創業者利益を得るため
1.と2.は、「もっと会社を成長させたい!」という強い意志を感じます。できればこういった会社に投資したいものです。
一方で、3.はいわゆる上場ゴールというものです。上場するとその会社の株価は上昇するので、最初から株を持っていた創業者はそれだけで莫大な利益を得ることができます。これを目当てに上場した会社は上場で目的が達成されてしまうので、その後のモチベーションがあがりません。すると、株価も上がりにくくなります。これは投資したくないパターンですね。
株から得られる2つのリターン
株式投資にはインカムゲインとキャピタルゲインという2つのリターンがあります。
インカムゲインは資産そのものが生み出す収益です。キャピタルゲインは資産の価格変動によって得られる利益です。
株ではそれぞれ次のものが当てはまります。
- インカムゲイン:配当や株主優待
- キャピタルゲイン:株価の値上がり益
配当や株主優待は、会社が生み出した毎年の純利益から株主に還元されるものです。毎年安定した利益をもたらしてくれます。
個人投資家をより多く獲得して、時価総額の下落を防ぐために増配や良い優待を出す会社が増えてきていますね。
ただし、配当や優待を狙いすぎて、権利落ち日に株価が下落してしまうことはよくあることなので気をつけましょう。
株価の値上がり益はそもそも得られるかどうかが不確実なものです。そして、1度きりしか得られません。
また、株価は値下がりする可能性もあります。これによる損失をキャピタルロスと言います。
大切なのはあくまでも企業収益
配当や優待による利回りの良さに惹かれて投資することもあると思います。
しかし、そんな時でも忘れないで欲しいのは、配当も優待も会社の収益から生み出されているということです。
インカムゲインもキャピタルゲインも、その源泉は企業収益です。
企業収益が上がるから、配当も増えて株主優待も出る。企業収益が上がるから株価も上がる。これが原則です。
逆に言えば、企業収益が減ると、配当も減るし優待も無くなる。企業収益が減ると株価も下がる。
つまり、今の配当や優待がどれだけ良かったとしても、企業収益が減るとそれらが悪化する可能性があります。
だから、大事なことはあくまでも企業収益です。その会社の未来が明るいかどうかです。
会社が生み出す純利益は株主のものになる
投資家が株に投資する目的はその会社が生み出す純利益を得るためです。
純利益は内部留保する分と、配当として株主に還元される分に分けられます。ちなみに平均的な日本企業では純利益の70%を内部留保し、30%を配当として還元します。
配当が株主になる、というのはわかりやすいです。株を買ったことで直接現金が得られるからです。
一方で、内部留保した分も株主のもの、とはどういうことでしょうか?
内部留保されたお金は、株主資本に再投資されます。つまり、会社が新たにお金を稼ぐための資金になり、会社の純資産になります。
株主資本から得られる収益率をROEと言います。例えば、毎年ROEが同じ水準の企業があったとして、毎年の純利益を全額内部留保したとしましょう。
すると、株主資本と利益は次のように伸びていきます。
会社の利益(収益力)も株主資本(資産)も指数関数的に増えていることがわかります。これは明らかに企業価値が上がっていると言えます。
これで株価が上がらない訳がない。
つまり、内部留保はROEの複利の利回りで企業価値、すなわち株価を上昇させます。
株価の値上がり益はもちろん株主にとっての利益ですから、その原因である内部留保は株主のものと言えます。
株価が動くメカニズム
株価が動く原因は企業価値、すなわち収益率と資産にあります。しかし、株価を直接的に決めるのは需給です。株の数が決められているからです。
この需給を決めるのは市場です。市場は投資家で構成されています。そして、投資家が投資するかどうかの判断材料にしているのがファンダメンタルズ分析とテクニカル分析です。
ファンダメンタルズ分析
ファンダメンタルズ分析とは、企業や経済の実態を分析することです。
つまりは会社の収益力と資産を評価しているのです。そのための指標もいくつかあります。
収益力を表す指標が一株益(EPS)やROEです。これと株価を比べて割安かどうかを判断する指標がPERです。
資産を表す指標が一株当たり純資産(BPS)です。これと株価を比べて割安かどうかを判断する指標がPBRです。
この分析の結果、収益力よし、資産よし、割安だ、と判断されれば株は買われます。一方で結果が悪い、割高だと判断されると株は売られます。
そしてこれは中長期的な株価の動きを左右します。
ファンダメンタルズ分析は、銘柄を選択するために行います。
テクニカル分析
テクニカル分析とは、主に株価チャートを使って、トレンド、サイクル、値動きのクセを分析することです。
テクニカル分析は株価が動く直接的な要因、つまり需給を分析しています。
こういったテクニカルな要素は短期的な株価の動きを左右します。
テクニカル分析は、売買のタイミングを選択するために行います。
ファンダメンタル分析もテクニカル分析もどっちも大事
どんなにファンダメンタルズが良い銘柄でも、タイミングを間違えれば損をするのが株式投資です。
良い銘柄を良いタイミングで売買できて初めて成果が出るのです。